《MUMEI》

「よくやるね。仕事でもこんな感じでお客さん取ってんの?」

男なら誰もが一度は夢に描いた理想の体というやつが目の前で全裸を披露していた。恥じるような欠点は微塵も見当たらない。

「俺、体力馬鹿なんでそんなことしたら離れていっちゃいますよ。
それに複数抱いたらその倍誰かが泣く。」

「歯が浮くような台詞も平気で言えなきゃNo.1は勤まらないものね。」

俺も上着を脱ぎ始める。

「四つん這いになって。」

俺の指示に従う。あの小暮国雄が……、奇妙な光景である。
刃向かってくるのも時間の問題だろうか。

それならそれでいい。



「始めてなら優しくしなきゃね。」

光のときは放つ瞬間の嬌声を聞きたかったから多少乱雑にしても構わなかったが、彼には丁寧に相手をしたくなる。きっと嫌がっているのがわかるからだ。
早く終わらせたがっているからつい、長引くようにしてしまう。

垂らした潤滑剤が周りを覆うまで見届けた。
指を丹念に浸す。無機的な作業だ。以外に楽しい。たまに引き付けを起こしたみたいに体が揺れる様がなんだか可愛らしくさえ思う。

「……どう?」

聞いてみることにした。

「気持ち悪ぅ……」

踞っままの後ろから振り向いた顔は心底軽蔑した瞳でかえって俺を煽った。

「嫌いな男に抱かれるのはどんな……かんじ?」

指だけで巧みに俺のを勃たせて自ら挿れ安いように進めてくる。
ここまで俺に奉仕するなんて自棄とも受け取れた。

「……嫌いでは 無いですよ……っ、俺は……」

ひくひくと慣れない入口は声と共に響く。
沈没していく感覚だ。

「……は、何言ってるの…………」

「……忘れませんよ ……俺は……」

爪の先まで全て埋まって、逝きそうだった。

ずっとそれが欲しかった。
俺を忘れないという偽善でもいい優しさ。





吸い込まれて鳥肌が立つ。

予想外に早く撃ち付けた。全て仕方ない、この男になら光さえ仕方ない思う。
それだけ価値がある快楽の時間だった。

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