《MUMEI》 「…相原??」 片づけが終わって、一人でぼうっとしていると、 梶野が声を掛けてきた。 「…梶野…」 「なにやってんの、一人で??」 心配そうに聞き、あたしの隣に腰掛ける。 「…別に。 マキも今日から部活だし、なんか暇だなー…って」 そう答えると、 「…そっか。じゃ ー、もう帰ろーぜ!!」 元気よく言って、梶野が立ち上がった。 「…え??―…うわっ!!」 あたしも、梶野に腕を引っ張られて、立たされた。 「…帰ろう!!」 笑顔で言われると、頷くことしか出来なくなる。 「…うん」 並んで、自転車置き場へと向かった。 ―帰り道。 「今日は勝ったし、よかったなー!!」 「そーだね…」 あたしの薄い反応に、 「…やっぱ、お前変だぞ?? ―…さては、おれの走りに惚れたな??」 梶野がふざけて言う。 「ば…ッ!!んなわけ…!!」 あたしは焦って、 自転車のバランスを崩してしまった。 「…じょーだんだろぉ?? ま、あんだけカッコよければ、 惚れんのもムリないけどな!!」 梶野がうしし、と自慢げに笑う。 「…見てなかったし!!」 あたしがそっぽを向いて言うと、 「え!?うそ!!?…えぇ〜……」 一気に梶野のテンションが下がったので、 「うそだよ!!…ちゃんと見た」 と正直に答えてあげた。 すると、 「…どーだった?? かっっこよかっただろー??」 また梶野が調子に乗ったので、 「べっつにー?? フツーだよ、フツー!!」 …嘘をついた。 「…いーもんね!! 走った後、おれカワイイ先輩たちに モテモテだったし!!」 「……う、うそ!?」 ―…それは、ちょっとやだ!! 「うっそー。 モテモテだったのは男の先輩に、だよ… もームサイのなんのって!! …みんなして抱きついてくんだもん…」 「…ぷッ!!」 「笑うな―――!!!」 遠い目をしてぼやく梶野を見て、 噴き出してしまいながらも 自分がほっとしているのがわかった。 「…じゃーな!! 来週のテスト、がんばれよー♪」 「…梶野もでしょ!!」 「―…おれはいーんだよ!!」 「…なにそれ…また赤点取っても知らないよ!! …じゃーね!!」 「おう!!」 そうやって、あたしの家の前で別れた。 …確かに、あたしは勉強しないとやばい。 梶野は―… 実はホントに頭よさそうだから、 ダイジョーブなのかも… ―…なんか、梶野が遠くなっていってる気がして、 あたしは少し不安を覚えた。 前へ |次へ |
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