《MUMEI》
テレビの表示
「………これが、ユウゴを見た最後」
DVDを停止して、ユキナは言った。
「……兄ちゃん、捕まったの?」
サトシはゆっくりと視線をテレビからユキナに移した。
「ううん。いなくなったの」
「うまく、逃げたんだ?」
ユキナは薄く笑みを浮かべて「そうだね」と頷いた。
「でも、」
ユキナは言葉を続けながら、テレビをニュース番組に切り替えた。

 女性キャスターが無表情にニュースを読み上げている。
久しぶりに見るテレビ番組だ。
伝えられているニュースも、知らない話題ばかりである。

 画面を見ていたサトシは、ふと気がついた。
プロジェクト前にはなかったはずの表示が画面の右上にずっと出ている。
サトシは思わずテレビに向かって身を乗り出し、体に走る痛みに顔を歪めた。
「っつ……!ね、姉ちゃん、これ?」
「全部の番組で、一日中流されてるの」
疲れたような表情でユキナは言う。

 サトシはユキナの手からリモコンを取り、全てのチャンネルを回した。
ユキナの言う通り、どのチャンネルにも同じ表示があった。

それは、ユウゴの顔写真だった。
学生証の写真なのか、姿勢を正し、まっすぐこちらを向いているユウゴの顔。

「これ、指名手配?」

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