《MUMEI》

原付は否応無しに最高速度で走っている

120k…

ギリギリかと思っていたが
7時ごろに着いた

もちろん事故ったりはしていない

「まったくもぅ なんであんな飛ばすかなぁ」
エレベーターはバレるから階段を登りながら
声のボリュームを下げてこそこそっと言う

「でも早く着いただろ?」
「それは……でも危ないじゃん」

「事故ってないんだから 問題ないだろ?もうまんたいだよ」
っと少しふざけ気味に言う
アイツも本当に怒っている訳ではないように見える

口元が笑ってるから

病室に着いた……が看護士がベッドの隣に腕を組んで立っていた……

『どこ行ってたの!?あなた自分の体の状態わかってるの!?本来なら立ってるのも不思議なくらいなのに!?』

「ぇ?……」

「はぃ」

『まったく
「ちょっと待てよ」
……はい?』
言葉を遮られ不機嫌そうに答える看護士

「立ってるのも不思議なくらいって そんなに悪いのか?」

『当たり前でしょ!?腫瘍の治療は放射線治療にせよ何にせよ副作用はとてもつらいし、体を蝕んでいるはずよ』

「そんなに良くない状態なのか?」

『普通の人なら起きあがることすら出来ないでしょうね』

「…………」

そんなに悪いとは全く知らなかった
このまま手術すれば治る物と思っていた

……甘かった

結局アイツのこと全く考えていなかったのか

辛い思いをさせていたのか……

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