《MUMEI》
頭からの血
「はあ‥はあ‥はあ‥」
晴香は足をふらつかせてた。足の感覚がわからない…。
信号で止まる以外は、必死に走っていたのだ。
晴香の目に、水の宮公園の入口が見えた。
晴香は表情を輝かせて、スピードを上げた。

日は傾いて八神は一人しゃがみ込み、泣いていた。
桜は再び風に揺られた。花びらが散る。
八神は頭に巻いた包帯が湿っていることに気付いた。
ポタポタと涙と共に血が滴り落ちる。
「ヤバイ!!」
八神は急いで松葉杖を手にとって立ち上がったが、目の前が真っ暗になり、再び地面に倒れ込んだ。
八神は指に力を込めたが、土に食い込むだけだった。
「…あーあ…検査中の身なのに…抜け出したのがやばかったな…」
八神は意識がもうろうとするなか、必死に呼吸をしていた。
「八神!!」
八神の耳に、八神の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「‥?ご‥藤‥?」
八神は呟くように言うと、ゆっくり目を閉じた。


池の周りを歩いていた晴香は、桜の樹の下にいる八神を見つけた。
立ち上がろうとした八神は足から崩れて地面に倒れたのが見えた。
晴香は橋を駆け、八神に近づいた。
「八神!!」
晴香が近づくと八神は眠っているような顔をしていた。呼吸は微かにある…。
晴香はホッと胸を撫で下ろして、携帯を開き119をプッシュした。
電話はすぐに繋がり、若い女の人の声が聞こえた。
「助けてください!水の宮公園で…友人が倒れて起きないんです!!」
晴香は最低限の用件を伝えて、八神の包帯を取り、自分のハンカチをあてた。
ハンカチが一気に赤く染まる。
晴香の頭の中には最悪の事態が浮かんだが、晴香は頭を振りそれを打ち消し、必死に八神の名前を呼んだ。

「八神!八神!」


―お願い…死なないで…。

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