《MUMEI》
初メテノ喧嘩
輝はさっきから何もしゃべらない紬に苛立ちをおぼえた。
「ちょっと紬?」
「輝はバカなの?」
紬は眉をハの字に曲げ、今にも泣き出しそうな顔をした。
「ば…バカって何だよ!?」
「だって…『Wings』は下手すれば羽が無くなるのよ?天使でなくなるのよ?分かってるの?」
輝は紬から目を反らした。
「分かってるよ…でも…俺はきちんとした天使でありたいんだ…紬の契約天使で…」
「輝の言いたいことはよく分かるわ…だけど…」
「うるさいっ!」
輝は紬の言葉を遮った。
紬は目をパチクリさせている。
「俺は所詮堕天使なんだ!消えて当然の存在なんだ!!」
輝は強く拳を握った。掌に爪が食い込んだ。
紬は何も言えずにただ俯いていた。

―コンコン
入口のドアが叩かれ、紬が返事をする前に扉が開いた。
「こんにちわ」
そこには雫が居た。
「あら、いらっしゃい雫さん」
紬は無理矢理の笑顔を雫に向けた。
雫は微笑み返し、輝に手招きをした。
輝は首を傾げながら雫の後を付いて行った。

雫は輝を自分の部屋へ入れ、ソファーに座らせた。
雫は輝と向かいのソファーに深く座った。
「あの‥雫さん‥?」
輝は体を小さくしながら言った。
雫は微動だせずに居た。
輝はガシガシと頭を掻いた。
「貴方は本当に堕天使なの?」
雫は真っ直ぐ輝を見つめた。
輝の心臓は大きく脈打ち、輝は何も言えずに居た。
「答えて‥」
雫は目線を一切変えない。
輝にはそれは耐え切れなかった。


「は‥‥い‥‥」

輝が言うと、雫は拳で机を力いっぱい叩いた。
部屋中に鈍い音が響き、雫は肩を落とした。

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