《MUMEI》

少し真面目に勉強し始めようと思ったあたしは、
どうしてもやる気になれない数学以外は結構頑張った。


明日から、テストが始まる。


最近声を掛けることのなかった梶野に、
勇気を出して、自分から声を掛けた。


―…前までは、こんなに緊張しなくてすんだのに…!!


「…か、梶野!!
…今日…一緒に帰れる??」


いきなりの誘いに驚いたのか、梶野は目を丸くした。


「…めずらしー!!
なんか、相原と久しぶりに喋ったー!!」

「…そ、そう??」

「おう。…だって、いっつもおれから言ってたもん。
―…なんかあったのか??」

「…いーの!!…た、たまにはいっかな、って思っただけ!!」

「ふーん??…まあいいや!!帰ろーぜ!!!」


梶野はあっさりそう言うと、
鞄をつかんで歩き出した。




―自転車置き場。


「なんか、秋っぽくなったよなー」


しみじみと言いながら、自転車の鍵を取り出す梶野。


「…そーだね…」


空は高く、風はずいぶんと涼しくなった。


季節を感じているのもつかの間、

あたしは、梶野に聞きたかったことを
何気ない風に、切り出した。


「…梶野ー…」

「ん??なにー?」

「最近さ…よく、職員室呼ばれてるよね!!
…なんかやったのー??」


―…瞬間、梶野の手が止まった。


「……………」

「……梶野…??」


…沈黙。



あれ??

…まずいこと訊いた??

梶野が静かにあたしを振り返る。


「…公園、寄れるか??」


いきなりの提案に少し戸惑いながらも、

あたしは小さく頷いた。

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