《MUMEI》 山田の話はこうだった。 指導室―― 「山田、俺は長年指導室にいるがな、お前ほど馬鹿をやったやつに今まで会ったことがないぞ」 「…はい」 「ったく…、呆れすぎて怒る気にもならんわ。ラッキーカラーねぇ…」 「はい…」 「まぁいいや、許してやるから、ホレ、髪戻せ」 デスクの中から黒染めを出す中山。 鬼指導と言われる先公も、俺のピンク頭にはほとほと呆れたらしく。 殴られるの覚悟だった俺は、中山の意外な一面を見れて親近感がわいた。 「先生、できたー」 黒染めですっかりいい子になった俺。 「おー、お前そういえばアレの前は茶髪だったっけなぁ。そっちのがいいぞ」 さ、授業いったいったと手で合図され、俺は失礼しましたと深々とお礼を言って指導室を出た。 ガラッ 「あ!!」 「え?」 指導室のドアを開けると、女の子が重そうな荷物を持ってふらついていた。 「おっと!大丈夫?」 こけそうになった女の子と荷物を支えて、俺は質問した。 「あ、うん、平気。大丈夫、ありがとう」 見たことあるような、ないような… あぁ、たしか、隣のクラスの子だったかな… そんなことを思いながら、俺は荷物をその子から取り上げた。 「これどこに運ぶの?」 「え?あ、いいよいいよ!」 「どこですか?」 「あ…えっと…そこ、です」 「ああ、そっかそっか。 おーい、先生ー」 俺は指導室の中に向かって叫んだ。 「なんだー?」 「女の子にこんな荷物運ばせるなよな〜」 「おー、わりいわりぃ。 清水、ありがとうな」 「あ、はい」 失礼します 「失礼しまーす」 前へ |次へ |
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