《MUMEI》

「栗栖!」

帰り道、前を歩いている栗栖を見つけてチャリで追い付いた。

「すぐわかったぜ、そのリュックで」

ニカッと笑いながら、栗栖のリュックを指差す。

「でしょー??」

嬉しそうに言う栗栖。

「栗栖ってバス通?」

「うんそう」

「乗れよ、送ってやるよ」
「え、いいの?」

「おう!乗れ乗れ!」

「…、ありがとう」

微笑む栗栖に、一瞬ドキッとした。


「「しゅっぱーつ!!」」
笑いながら、ペダルをこぎだした。




「でもさー、白ってすぐ汚れそうだから怖いんだよね〜」


話題はもちろんリュック。

「あーたしかになぁ」

「やっぱ目立たない色にすればよかったかな〜」

「でも栗栖に白似合ってるぞー」

「本当に〜?」

「お〜まじまじ」

「栗原も、この青似合ってるよ」

「まじ〜?」

「まじまじ〜」

「「ハハハっ」」


いつも辛口な栗栖の、素直な一面が見れて嬉しかった。

バス停に近づいていくのが、なんかちょっと残念だった。




「あ、きた。

送ってくれてありがとう」
「どういたしまして」

バスに乗ろうとする栗栖が、いきなり振り向いた。

「栗原!」と同時に、何かが俺の手に飛んできた。

「あげる!
彼女、できるといーね!
また明日ね!」



バスが出発したあと、手にある青色のキシリトールガムを見て、嬉しい反面…


『彼女、できるといーね』

さっきの、栗栖の言葉に少し胸の痛みを感じながら、俺はチャリにまたいで家路についた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫