《MUMEI》
黄色
「何、それ…」

翌日、俺の姿を見て、栗栖は呆れている。

「今日のラッキーカラーは」
「黄色でしょ。言われなくてもわかるっつの」


今日のラッキーカラーは黄色。

今日の俺の格好。
黄色の防止、黄色のだて眼鏡、黄色の手提げカバンに黄色のスニーカー、そして黄色の…バナナ。


「……」

「……」

「…はははっ、あんた、いくらなんでも、やりすぎよー、ははは」


びっくりした。
いつもの栗栖なら、すっげーしらけた顔でバカにすんのに…


「つーか、極めつけがバナナって、猿じゃないんだからさー、ハハハ」

「レモンと悩んだんだよ」
「やだもうー朝から笑わせないでよー」


ずっと笑っててほしいなって思った。

「そんな栗原くんに、はいこれ」

「何?」

「バナナほどの威力はないだろうけど。ククッ」

笑いながら、栗栖が手渡してきたのは、パイナップル味のハイチュウ。


「朝コンビニ行ってきたからさ、」

また、胸がチクッとした。




ガラガラ
「失礼しまーす」

「おー、入れ入れ」

昼休憩、俺は中山に呼び出された。

「……」

俺を見て、口を開けたまま固まる中山。

と思いきや
「ブハハッ!!おまえら本当単純だなぁ!!!」

豪快に笑いだした。


「いやー、朝の職員会議でお前の格好がすごいって話が出たからさ、見たかったんだよ。しかしすげーなぁ」

「んなことで指導室に呼ぶなよー、びっくりすんじゃん」

「ガハハ!
いや、山田のピンク頭もだが、お前ら、ラッキーカラーにまだハマッてんのか??」

「ふんっ」

「まー害はないからいいけどな。はー面白かった。」
散々笑って、中山はデスクに向き直った。




「なー、中セン?」

「なんだ」

「ラッキーカラーなんかで、彼女ができんのかな〜」
「そう信じてやってるんじゃないのか?」

「んー、けど最近、できない気がしてきた…」


キィ

回転イスを回して、俺のほうに向く中山。

「お前、好きな女いるだろ?」

「ブハッ!なっ、なん…っ」

飲んでたコーヒー牛乳が飛んだ。

「図星だな」

一瞬、栗栖の顔が思い浮かんだ。


「ちっげーよ!!何でそう思うんだよ!?」

「勘だ、勘」


勘かよ。


「その女に告白すればいいじゃないか」

「無理。つーか好きかどうかわかんねーし、第一、『彼女できるといいね』なんて言われたんだぜ!?言うだけ無駄」

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