《MUMEI》

「お父さん」


「お。達一は?」


「お風呂」


「そうか…」


縁側から見える満月の光が、父の少し増えた白髪を私に見せた。


「ようやく、しおも貰い手が見つかったなぁ」


「寂しい?」


「そりゃあな。けど、楽しみもある」


「?
なに?」


「孫に早くおじいちゃんって呼ばれたい」

ニカッと笑う父の姿に、少しだけ達一がかぶった。


「すぐ会えるよ。楽しみにしてて」


「女の子がいいな」


「ダメ!絶対男の子!!」

「でも達一も女の子がいいと言ってたぞ」


「産むのはあたしだもん!」


「ははは!詩織、」


「ん?」


「おめでとう」


「…、ありがとう」


あたしたち親子の会話を聞いていたのは、あの綺麗な満月だけ―――

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