《MUMEI》

「あれ、なにしてんの?」

先に寝てると思っていた達一は、布団の上で正座していた。


「ちょっと座れ、いや、座ってください」


「?
なによ、改まって…」


不思議がりながら、言われたとおり達一の正面に正座する。


「……」

「……」

真剣な表情で見つめてくる達一。

笑いだいのを必死で堪えて、あたしは言葉を待った。


「神田、」


「ん?」


「俺は、ずっと昔…小学生のときから、お前のことが好きだった、ってのは知ってるよな」


「うん…」


「フラれてもフラれても、お前のこと諦められなかった」


「うん」

「俺がバカ野郎だから、お前を三十路になるまで一人でいさせてしまった」


「…そうだ、ね」

「俺は、これから死ぬまで、ずっとお前のそばにいる。離れてもついてく。俺が離れたら連れていく。」


もう、二度とお前を一人にはさせない…

ずっと俺のそばにいてください」


「……っ、ぅ…、ぅぅー……」


「返事!」


「っ、嫌っつったら?」


「聞かない」


「だろうねっ…、石田、」

「おぅ」


「三十年ぶんの埋め合わせは、これからの人生すべてであたしに償って。


愛してるよ」

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