《MUMEI》
指名手配
「そう。しかも国際手配で時効なしだって」
「……そんな」
これだけ大々的に手配されていたら、逃げ切れるわけもない。

「今のところ、うまく逃げてるみたいだけど」
「何他人事みたいに言ってるんだよ。助けようよ。僕たちだって同罪だろ?」
「馬鹿言わないで」
サトシの言葉にユキナは冷たく言い返した。
「言い忘れてたけど、あんたもわたしと同じだからね。今度何かしたら、即極刑」
「なんだよ。いまさら死ぬのが怖いの?」
「そうじゃない!」
ユキナは声を荒げた。
「そうじゃなくてさ……これ」
言いながら取り出したのは二つに折られた一枚の紙。
「ユウゴが会場に飛び降りる直前に渡してきたの」
サトシは受け取った紙を開いて中に書かれてある文字を読み上げた。

「俺のことは気にすんな」

紙には乱れた赤い字でそう書かれてあった。
「たぶん、あの最中に自分の血で書いたんだと思う」
「気にすんな……か」
「ユウゴ、一人で逃げ切るつもりなんだよ。わたしたちにこれ以上負担をかけないように」
「負担って、」
「それに」
ユキナはサトシの言葉を遮った。
「ユウゴがどこにいるのかわかんないし…」
「……そうだね」
サトシは小さく頷きながらニュースを眺めた。
キャスターは淡々と原稿を読み上げている。

「わたしたちにできることは、ユウゴが捕まらないように祈るだけだよ」
ユキナの寂しそうな声をサトシは聞いていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫