《MUMEI》 オレンジ「んなこと言われたぐらいで諦めんのか最近の若いもんは」 「言い方古いっすよ」 「好きになった女ぐらい、手に入れてみろ。第一、おまえまだフラれてもいないだろ」 「…たしかに」 「俺なんかなぁ、今の嫁つかまえんのに5回フラれてんだぞ?」 「まじで?!」 「諦めたらそこで終わりだぞ、夢も女も、勉強も部活も。」 「…」 中山の言葉は、俺の心に深ーく染み込んで、 いつも怒鳴ってばっかの中山、かなり好きになった。 言ったら、気持ち悪いと言われたけど。 進路で悩んだら、絶対指導室に来ようと誓った。 「あれ、栗原じゃん」 「、おぅ」 栗栖に声をかけられただけで、なんか安心する。 ニヤケてねーかな、俺… 絶対中山のせいだ… 「何してんの?」 チャリの横にしゃがんでた俺に合わせて、栗栖も反対側にしゃがんだ。 目線が同じになってる。 「帰ろうとしたらチェーン外れててさぁ」 「そうなんだ。大丈夫?」 「おう、慣れたもんよ」 言いながら作業を開始した。栗栖は帰らずに、そのまま俺の前にいる。 他愛もない話をしてくれる栗栖。一人でチェーンを直すなんて、なんて虚しんだろうと思ってたから、そこにいてくれるだけで、とても嬉しい。 なんて、俺完璧気になってんじゃん… 「あ、夕日見える」 「どこ?」 「後ろ後ろ!きれー…」 振り向くと、空の雲に綺麗にオレンジがかかっていて、消えかかったヒコウキ雲がまっすぐに伸びていた。 「今日のラッキーカラーがオレンジだったら、絶対いいことあっただろうね」 空を見上げながら、栗栖がそっとつぶやいた。 「あったんかな」 「あったあった。少なくても…」 「?」 「今日ラッキーカラーがオレンジだった人は、絶対いいことあったはずだよ」 そう言った栗栖の顔は、本当に嬉しそうな表情だった。 「うっし!直った!」 「よかったね。じゃあまた明日ね」 「え?あ、送ってくよ」 「ううん、迎えきてるから。ありがとう、じゃあね」 「あ、おう」 スキップしながら校門に向かう栗栖。 校門の前に止まっていた、派手なベンツ。 助手席前でじゃれあう男女。 男のほうは、女の頭を撫でていて、 女のほうは、嫌そうだが笑顔で。 仲良く車に乗り込んで、俺が見てたことなんか気付きもしないで 恋だと自覚した途端、失恋した。 前へ |次へ |
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