《MUMEI》 屋上――― 「なかなか、男前じゃん」 自分の金髪写メを見てる俺。 中山とのツーショット。きも。 あのあと、指導室で黒染めした。 久しぶりの黒。たぶん、中学生のとき以来。 高校に入ってそっこう茶髪にしたからな。 「山田もだったが、おまえも黒似合ってるな」 中山に褒められてちょっとにやにやしてしまう。 「これからはその頭同様、“まじめ”になっ」 中山には了解って言ったけど、教室に戻りたくないから屋上でサボり中。 「あーあ…、山田のようにはいかなかったなー…」 あのときのオレンジ空と同じように、今俺の上をヒコウキ雲がまっすぐ走っている。 あの雲みたいに、俺の気持ちも、栗栖に届けばよかったのに… 「はぁ…」 「ため息はくと、幸せが逃げちゃうよ」 「!!」 「まっ、あたしは信じてないけどね」 ドアのところに立ってる人物を見て、俺の心臓はバックンバックン言い始めた。 (やばい!逃げなきゃ!) 「逃げても無駄だよ」 「!」 「あたし、ここにいるから」 出口を塞ぐ栗栖。 「近づいたりしないから、話聞いて」 あ、まただ。 さっきよりも、傷ついた顔… 「話、って」 「なんで避けるの?」 「っ…」 「あたし、何かした?したなら謝るよ」 「…」 別に、栗栖は何も悪くない。 俺が勝手に好きになって、 勝手に失恋しただけ… 「…別に、おまえは何もしてないよ」 「俺が、…勝手に、落ちただけだから」 「落ちた…?」 そう、落ちたんだ。 恋に。 ただ、それだけのこと。 前へ |次へ |
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