《MUMEI》
余談色
ピンポーン

ガチャ


「お兄ちゃん!」

「おぅ、利希。どうしたんだ、こんな時間に」

「聞いて聞いて!!」
「わかったって!とりあえず中入れよ」




ココアをテーブルに置くと、いざ!といった感じで利希は話し始めた。


「今日栗原がバス停まで送ってくれたんだよ!?しかもニケツで!!もーぉ超楽しかったー!!!嬉しかったー!!!」

「おまえ、そんなにあの不良が好きなのかー?」

「栗原不良じゃないよ!何度もゆってんじゃん!!」
「えー、でも俺らの中では不良だぞ〜」

「それはお兄ちゃんでしょ!!」


妹の利希は、同じクラスの栗原貴征に恋をしている。

妹は、何かあるたびに一人暮らしの俺のアパートに来て、べらべら話をする。


俺は、そんな妹の話をはいはいと聞く、ただの兄貴。


「早く告白すればいいのに」

「無理だよ、彼女ほしいってあたしに言うってことは、あたしのことそんなふうに見てないってことじゃん…」


さっきまではしゃいでたのに、いきなり落ち込むおもろい妹。


「あーあ、ラッキーカラーが当たったらどうしよっ、山田っち当たってたからなぁ…」


栗原たちの間では、ラッキーカラーなるものが流行っているらしく、ダチの一人はそのおかげで彼女ができたらしい。


そんなの、あたるわけねーだろとは思ったが、カワイイ妹のためだ。


「おまえもやればいいじゃん」

「へ?」

「山田ってのは当たったんだろ?おまえもやったら、もしかしたら当たるかもよ」

「でも…」

「信じる信じないはおまえ次第だと、俺は思うな」


「………やる!!!!やってやる!!!!絶対彼女になってやる!!!!!」


その日から、利希はラッキーカラーのものをそれとなーく付けていた。

彼女いわく、「見つかりやすいのを付けてたら、誕生日が近い栗原にバレちゃうからねっ」らしい。


まぁ、楽しいのが何よりで。


俺は陰ながら、妹の恋を応援した。






後日、「ラッキーカラー当たった!!!」と報告をうけたときは、

「まじかよ…」と信じられない気持ちと、

「……おれも、やってみようかな」という考えが生まれ、


次の日から、妹にならって“ラッキーカラー”に頼ってみることにした。








end

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