《MUMEI》
龍、墜つ
怒りも露にした龍が大きく口を開け、最大の魔力を持ってブレスを放つ。
属性は炎、されどあまりの熱量にその炎は白く輝き、光が放たれたかのような光景。
「リオレイア、その命・・・私が絶つ!!」
キィィィィィィ・・
射出されるシルフィールド。周囲の大気が同調し、その刃の長さは10メートルを超過し一直線に飛翔する。
光の奔流に挑むは巨大な円刃。
大気が焼かれ、円刃はその身を削られていくが・・それすらも補うだけの刃の長さ。
光を断ち切りながら・・巨大な円刃はその射程に龍を捕らえる。
「――――――!!」
ブレスを吐いたまま、龍はその身を捩り、刃から逃れようとする。
ズドン!!
その動きを縫いとめる一撃は真横からの矢。
突き立った矢はその身を緋色の燐光へと変え、その役目を終える。
リオレイアの右翼を断ち切り、風がその力を解き放つ。
ゴォォォォオオオオオオオオオオ!!
ズタズタにリオレイアの体を刻みながら風は、空へと帰っていく。ブレスさえも巻き込みながら・・
リオレイアは力を失ったように大地へと、街へと墜落していく。
「く・・何とか・・しないと!!」
彩詩は落ちていくリオレイアに追従するように急降下していく。
パシン。
戻って来たシルフィールドを受け止めるリアム。
シルフィールドに魔力を供給し続けた腕はズタズタに裂け、痙攣を起こしていた。
「ふぅ・・一介の武器屋の主人には過ぎた技って事かな・・」
広げられた翼は、風の流れを楽しむように大きく膨らみ、強くその身を押した。
「・・・行こう。風の止まない内に!!」
強く翼を動かし、彩詩の後を追う。
その言葉は風に流され、風にしか聞こえなかった。
ズドン!
落ちていくリオレイアの真横、同じ速度で落ちながら矢を放つ彩詩。
「あ〜〜も・・無駄に大きいんだから!!」
結界を打ち抜き、リオレイアに届いているが・・
「・・・護るって決めたんだ。諦めない・・」
引き絞られる弓。
魔力が集まり、緋色の輝きを強くする。
「まだまだ・・もっともっと!!」
背の翼が碧色の筋となり、弓に吸収されていく。
飛ぶための力を全て、一撃に預け、不安定な姿勢のまま・・
「穿て!!」
撃ち放つ。
ズドン!!!
凝縮された魔力が緋色の燐光を撒き散らしながらリオレイアに着弾する。
轟音、爆ぜる魔力・・その全てを纏ってリオレイアは街の中央へと吹き飛ばされていく。
リオレイアの巨体が街に落ちれば、それだけで被害が出る・・
中央を流れる河・・そこに落とせば、被害は最小限に抑えきれる。そう考えた結果の行動。
「嘘・・届かない!?」
河までは後、20メートル余り。
地面までの距離もすでに100メートルを切っている。
「なんで・・こんな時に力が足りないのさ!!」
悔しさに歯噛みする。
背には翼も無く、後はもう地面に叩きつけられるのを待つだけ・・

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