《MUMEI》
テスト開始
「幸!!…このこと聞いてたの…??」


SHRが終わったと同時に、マキが駆け寄ってきた。

小さく頷く。



「……じゃあ…!!」

「言わないよ」

「…え…」


マキの動きが止まる。


あたしは、ゆっくりとマキの方へ顔を向けた。



「…言わない。あたしの気持ち言ったって、
…梶野、困るだけだもん」

「…そんなの、わかんないじゃ…」

「いーの!!もう決めた!!!」

「…そんな…」


マキが悲しそうな顔をする。


「―…なんて顔してんの!!
人の気持ちなんて、
すぐに切り替えられるんだから!!ね!」


―…空元気。


でも、諦めるほかにどうすればいいのか、


バカなあたしには、ちっとも分からない―…



「…わかった」


マキが、つぶやいた。


「幸の気持ちだもんね!!
あたしは口出ししない!!!」

「…うん…―ありがと」



マキは大きく頷くと、


「…じゃ、テスト頑張ろうね!!!」


そういい残し、自分の席へ戻っていった。

マキは、感づいてくれたんだ。


あたしが、
もうどうしようもないくらいに
疲れ果て、狼狽しきってること。




―…梶野を困らせる気はない。


あたしが、この気持ちを忘れればいいだけ。


ただ、


それだけ―…




チャイムの音が鳴り響き、


梶野のいない教室で


中間テストが始まった。

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