《MUMEI》
フラれた?
―ガララッ
あたしが、店と家が繋がるところの扉を開けると、レジの近くに雲雀さんが立っていた。

「こんにちは」
雲雀さんは軽く手を挙げながら微笑んだ。
「どうかしましたか?」
あたしがサンダルを履きながら近づくと、雲雀さんは言いづらそうに頭をガシガシ掻いた。
「どうしました?」
あたしが顔を覗くと、雲雀さんは小声で囁いた。

「フラれた」

心の中のあたしは、軽やかにスキップした。
「なんで…ですか…?」
雲雀さんは再び頭をガシガシ掻き回した。
「伊藤先輩がさぁ…『距離置こう』ってメールして来てさ…」
雲雀は深く溜め息をついた。
「それだけで別れるんですか?」
「だから、女子の意見を聞きに来たわけ!」
ああ…そうか。とあたしは1人で納得した。

―雲雀さんはちょっとした阿呆なのね…。

「雲雀さん…それはちょっとした勘違いでわ…?」
「えっ!?なんで!?」
雲雀さんの顔が近づいて来て、あたしの心は大きく脈打った。

あたしは心を落ち着かせるために咳ばらいをしてから話した。
「距離を置こうって事は、お互いに何か考えるべき事があるからじゃないないですか?」
「あるらしい。俺には解んないけど…」
あたしは苦笑いをして続けた。
「つまり、それが解決すれば、よりが戻るってわけですよ」
あたしは偉そうに動作を付けながら説明した。

雲雀さんは顔を輝かせた。
「そうか…じゃあ、伊藤先輩と話してみる!」
「えっ!?ちょっと…」
あたしが声をかけた時には、雲雀さんは勢いよくドアを閉めて、走っていってしまった。

「あ〜あ」
あたしは深く溜め息をついた。

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