《MUMEI》
表彰と賞品
「1年自由型の部 優勝…有河原樹〜!!」
わあっと歓声があがった。パチパチと拍手が起こる。

俺はあれから結局挽回することが出来ずに、有河原樹に優勝を許してしまった。

―俺の歯車が音を起てて転がった。
―鈍い音がした。

有河原樹の株価は只今ぐんぐん急増中…。
俺の株価は無視され中…。
同じ練習を積み重ねて来て、この扱いとは参ってしまう…。

俺は表彰台ではにかむ有河原樹を睨んで、更衣室へ向かった。
肩にずっしり重みがあった。
「やべー腕やっちまったかなー…。キャプテンに怒られるー」
俺はぐるぐると腕を回して、ストレッチをした。

更衣室には誰も居なく、シャワー室もガラガラだった。
俺はプールの薬を落としたくて、シャワーを浴びた。
水が妙に冷たく感じる。

―ガチャ
ドアが開いて、ペタペタという足音が近づいて来た。
俺はシャワーを止めてタオルを羽織った。
「さ〜わむら〜」
気の抜けたこの声は、有河原樹だ。
「この賞品しょぼくてさ〜、有り得なくね?学食タダ券5枚」
「しょぼっ!!」
俺はカーテンごしにツッコミを入れた。
「しかも明日まで〜」
俺は、頑張らなくてよかった〜と思ってしまい、頭を左右に振った。

「な〜沢村一緒に今から行こうぜ〜」
俺は、ジャージを着て勢いよくカーテンを開けた。
有河原樹は目を丸くしていた。
「なんだよ?」
俺が聞くと有河原樹は驚いた顔のままで、
「マジで沢村だった…」
と言った。

俺は濡れた髪を掻き回した。

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