《MUMEI》

今日はマキとも喋らなかった。

あたしの気持ちを察してか、

マキもあたしをそっとしておいてくれた。



―放課後。



「相原先輩、います!?」


…あたし…??


ドアの方を振り返ると、


息を切らしたりかちゃんが立っていた。


りかちゃんは、あたしに気づくと


早足であたしに近づいてきた。



「何やってんですか!?」

「………」



りかちゃんは必死の形相だ。



「明日、梶野せんぱい居なくなっちゃうんですよ!?
…なにも、言わないつもりですか??」

「……言ったって、意味無いもん…
……ごめんね…」



あたしがそう答えると、



「…そうですか。
先輩なら、って、譲ったのに…
もういいです。見損ないました!!」



怒った声でそう言うと、
りかちゃんは教室から出て行った。


―…ごめんね、りかちゃん。


…ごめんね、東郷君。



あたし、2人みたいに強くなれない。


りかちゃんみたいには、
きっぱり諦めがつけられないし、


東郷君みたいに、ちゃんと伝える勇気もない。



弱いんだ、あたしは。



梶野を困らせたくない、って言うより


気持ちを伝えたところで
梶野は振り向いてくれないだろう。



…それが、すごく怖い。



東郷君は、こんな気持ちと戦ってたんだね…


あたし、ほんとに偉そうなこと言った。


ごめんね…





―…もう、梶野に会えない…



でも、いいんだよね…??


これで、

いいんだよ、ね…

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