《MUMEI》

3時間目、数学。


テストが返ってくる。


時計の針は、11:00丁度を指している。



始業のチャイムの音とともに、
松本先生が入ってきた。



「起立、れーい」



授業が始まった。



「あー、では、今からテストを返す。
しっかり、訂正するように。…今井ー!!」


テストが返され始めた。


松本先生は、返すときにいちいち嫌味を言うので、
皆いつもすごく落ち込む。



「…相原ー」



ああ、どうせ今回も言われるんだろうな…


でも、返されたテストは、83点だった。


自分でも、驚いた。



「今回は、まあ頑張ったな。
…補習のとこがよく出来ていた。」



―…梶野に、教えてもらったところだ―…



「相原、人にはな、決められた時間しかないんだ。
苦手教科だって、頑張れば伸びる」



あたしは、顔を上げた。



「今を大切にしろ」



こころに、風が吹いた。



「…はい!!…先生、ありがとうございます!!
―…あたし、行きます!!」



あたしがドアへと向かうと、



「…ゆき!!」



マキの声。


振り返ると、何かが飛んできた。


両手で受け止めたそれは、
マキの自転車の鍵だった。



「行っといで!!…あたしの自転車、貸す!!」

「…マキ……
―…ありがとう!!行ってくる!!!」


あたしは駆け出した。



「こら、相原!!!
どこ行くかあ!!!」



ありがと、松本先生。





今を、大切にする。




あたしは、梶野に会いに行く。

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