《MUMEI》

「…あら、お友達??」


梶野の後ろから、
小柄な女の人が、ひょこっと現れた。



「…あの、えっと…」

「…もしかして―…相原、さん??」

「えっ??」



戸惑うあたしに
女の人は、にっこり微笑みかけると、
あたしの方へ近づいてきた。



「…トモからいつも聞いてたの。
初めまして、朋春の母です」



女の人はそう言って、お辞儀した。


―…梶野の、お母さん!?



そういえば、どことなく似てるような…



って!!


あたしの今の格好!!!



汗をかいて、
髪はぐちゃぐちゃ。

膝からは、血が滲んでいる。



「はっ初めまして!!
相原といいます!!!」



髪に手をやりながら、慌ててお辞儀する。



「かわいいお嬢さんね。
トモに聞いたとおり!!」



―…へ??



「ちょ、母ちゃん!!
変なこと言うなって!!」



梶野が慌てたようにお母さんの腕を引っ張る。



「はいはい。
…ごめんね、相原さん。
トモがいっつもお世話になってたみたいで…」

「あ、いっ、いえ!!
こちらこそ…!!」

「も〜!!…余計なこと言うなって!!」

「分かったわよ。
…お母さん、先に行っとくからね」



そう言うと、梶野のお母さんは、



「…素直じゃないのよ、あの子。
…あの、…離れちゃうけど…
―…これからも、仲良くしてあげてくれないかしら??」



遠慮がちにそう言った。



「…はい!!」



あたしが答えると、
梶野のお母さんは優しく微笑んだ。

梶野にそっくりの微笑み。



「…じゃあ、遅れないようにね」


梶野にそう言うと、梶野のお母さんはゲートの方へ歩いていった。



「…わりい、相原。
母ちゃんが変なこと言って…」



そう言う梶野の顔は赤い。



「…ううん。
すごく、いいお母さんだと思う…!!」



素直に、そう答えた。

キレイで、優しいお母さん。


梶野は、そんなお母さんを、
本当に大事に思ってるんだな―…



「…そーか??…まあいいや。
…相原、見送りに来てくれたんだな!!」



梶野が笑う。


“見送り”という言葉が、

胸に刺さった。



「…あれ!?お前、足どうしたんだよ!?」



梶野が、あたしの膝の怪我に気づいて言う。



「…大丈夫!!
…梶野、あのね…」



あたしの震える声に動きを止め、
顔を上げる梶野。



声が、出ない。


―…どうした、あたし。


ただ、二文字言えばいいだけ…



『すき』



って、言えば―…




でも、

梶野の真っ直ぐな瞳に捕らえられて、
身動きが取れない。

胸が潰れそう…


身体は熱くなって、
膝の痛みが戻ってくる。


足が震える…



「…あの、さ…梶野…」

「…ん??」




「あの…」


―…あなたが、



「…梶野…」


好きです―…

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