《MUMEI》

全身から力が抜ける。


泣くな、

笑え…!!


梶野が、困る…



なす術もなく立ちすくんでいると、



梶野に優しく抱き寄せられた。



優しくて、暖かい…。



あたしの涙は、次々と零れ落ちてくる。



「…かじ、の…??」

「…おれさ、怖くて、言えなかった。
―…好きだ、なんて言ったら、
相原が離れてくと思った。

『梶野と付き合うなんて、ありえない』

って、言われたし」



―…あのとき、やっぱり聞こえて―…



「…でもさ、
結局おれが弱かっただけ
だったんだよな。

―…ただ、そばにいたかった」

「…………!!」



―…こんなに、幸せな涙を流したのは初めてだ。




Stand by me―…




梶野の本当の気持ちは

いつだって、




―…あの歌にあった。




あたしは、梶野の背中に手を回し、

しっかりと、抱き締めた。

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