《MUMEI》
1年半
―…あれから1年半。

桜咲く季節。


梶野から、はがきが届いた。



『4月1日の夜、帰るから♪』



短い文面。

でも、確かに梶野の文字だ。


―…そういえば、
梶野はメールとか電話とか、あんまりしないな…


言いたいことがある時、




―…逢いに来るんだ、梶野は。




思わず笑みがこぼれる。

梶野らしいな…




でも、4月1日って…

エイプリルフールじゃん…

まさか、嘘じゃないよね…??



今日が、その4月1日だ。


はやる気持ちを抑え、
学校までの道を自転車で走る。



あたしは、あれから勉強をものすごく頑張って、
なんとか地元の大学に合格することができた。



高校の近くの公園を通りかかったとき、


桜の花びらに混じって、
鼻歌が聞こえてきた。



このメロディー…



あたしは自転車を停め、
公園へと足を踏み入れる。


ベンチに人影…



それは、忘れようのない声。



ベンチに座ったその人が、
あたしに気づいて立ち上がる。


髪、伸びた…?
少し、雰囲気変わった…??


でも、
何一つ変わらないその笑顔をもってして、


その人は言った。



「…ただいま!!

…驚いたか??ホントは、昨日帰ってきてたんだ」



「…ウソツキ!!」






【おかえり。】






その人、梶野の、その優しい腕が
あたしを包み込む。





―…梶野、これからはずっとそばにいてね。



あたしもそばにいるから。






―…嘘じゃないよ。








―Stand By Me―










―完―

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