《MUMEI》

隆志は俺の肩を抱いたまま立ち上がった。
俺よりも背が高くて…、ガチ好みの香水が漂う。

隆志は世間じゃ一番格好良い代名詞みたいな奴で、それに役柄のせいで黒髪になっていて余計格好良くて…。
俺に何時も優しくて…

「ずるい…」

「何が?」

甘く耳元に囁かれ力が抜けちゃう。

「だって…隆志格好良いんだもん…、拒みたいけど拒めないんだもん」

「拒む理由ねーじゃん、俺の事素直に好きになれよ」

「それは無理、無理だよ……」

自分が情けないよ、振り払う事が出来なくて…。
――でも、これが俺の悪いところ。


だから…

「ゴメン、離して…」

「どうして?、甘えたままじゃ説得力ないよ?」

隆志の額が俺の額に触れた。
温かさが伝わる…、ふわふわした空気が渦巻く。

「お願い…、俺から離れてよ…助けて…辛いよ…」

どうして、どうして…

「助けてあげるよ…」

そして俺の鼻をかすめ唇を塞がれた。
そしてきつくきつく強く抱きしめられ、


そして、ゆっくりと解放された。

隆志はジャケットのポケットに手を入れ、そして俺の左手を取った。

「会った時渡そうって決めてたんだ」

俺の薬指にすっと…
隆志はリングをはめた。

「…!!」

俺は…そのリングを見て…

頭の中が…呼吸が…上手く機能しなくなる。

酷い緊張で…声が出ない。

「俺はお前の事が……好きだ…。


裕斗俺と付き合って…、俺のモノになって」

――彼の…真剣過ぎる眼差し。


俺の指には……


―――欲しかった
クロムハーツの…
ゴールドのリング……

「付き合って」


俺は隆志の眼を反らせず…

ただ見つめていた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫