《MUMEI》
4season
「だから違うっつってんだろ」
「違うのはアンタでしょ」
「いい加減負けを認めなよ、千佳音ちゃん?」
「嫌。あたしこそが正義よ。ジャスティスです。英語分かる?イズミくん」
「バカにすんなよ俺英検五級だぜ」
「…高校三年生が五級で威張るな」
「よっし、こうなったら第三者に決めてもらおうじゃねーの」
「望むところよ」


昼休みの教室で白熱する二人だけの討論会。紺のネクタイを締め、キャラメル色の髪をした男子生徒が出席番号3番、和泉雪靖(いずみゆきやす)。
対面に座っているサイドポニーの黒髪に黒薔薇の髪飾りをつけた黒いセルフレーム眼鏡の女子生徒が出席番号33番、柊千佳音(ひいらぎちかね)。


「絶対コーラだからな、見とけよエセめがねっ子」
「うっさい変態。ソーダ以外に何が有るっての」


依然睨み合う二人を気に掛ける生徒はこの教室内に一人も居ない。昨日のテレビ番組の話だとかゲームの話だとか、雑誌を広げて流行のブランドについて盛り上がるクラスメイト達は見慣れた光景である二人の討論会になど全く興味を示さず平和な昼休みを過ごしている。


平和平和。日本は平和だね。

…まあ嫌な予感はしていた訳だが。教室の入り口に立っていた俺は出来る限りそっちに視線を向けないようにしていた訳でね、それでも案の定というか何というか。


「お、シキ」
「第三者カモン!」


見つかる訳でね。
こんな時自分の目立つ外見をちょっとだけ後悔したりもする。ちょっとだけな。

名前は清川四季(きよかわしき)。
黒と金のツートーンに染め上げた髪に耳と鼻筋と唇にピアス。ええと、全部でいくつだっけな、17?忘れた。
見た目がそんな感じだしネタになるような事が過去に有りすぎてね、自分に関する噂はここ二年程絶えない。因みに出席番号は13番。更に補足すると、今年ハタチ。


「何だよ…相変わらず仲いいなお前ら」
「シキ、正直に、直感で答えてくれ」
「ああ」

無視する訳にもいかないので二人が座っている隣の空席に腰掛けた。
イズミが真剣な表情で俺の肩を掴む。
そして、言った。


「ガリガリ君は何味が好きか」

「リッチミルク」

「………」
「………」

「………何だよ」


「「このセレブがああああ!!!」」


イズミと柊の声が綺麗に重なり、さすがに何人かのクラスメイトがこっちを見ていた。


ああ、平和だね。そして春だ。うん、春だな。



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