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《MUMEI》 プロローグ静かなピアノが響いている。心地よい旋律がオレの記憶を一気にあの頃へとフラッシュバックさせる。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 初めてキミと逢った日のことを覚えているよ。 偶然空いてたボクの隣にキミが座った。 人混みの中 適当な会釈。 グラスを片手に溜息ついてた。 花のようなキミの匂い。 嬉しくてずっと なんだか幸せなあの日のボクが居たよ。 名前ぐらいでグラスあわせて あとは沈黙。 弾まない会話 興味ないふりしてワイン眺めてた。 年上だったこと お風呂好きだったこと 何年もしてから知ったんだよね 他愛もない ドラマじゃない ありふれた出逢い。 それでもそこそこに幸せなボクが居たよ。 花のようなキミの匂い。 嬉しくてずっと なんだか幸せなあの日のボクが・・・。 他愛もない ドラマじゃない ありふれた出逢い。 今でもそこそこに幸せなボクが居るよ。ココに・・・。 初めてキミと逢った日のことを覚えているよ。 偶然空いてたボクの隣にキミが座った。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 もう何杯目だろうか、溜息と一緒にグラスを重ねてしまったようだ。 カウンターの向こうでは馴染みのマスターの表情が、 「今日はもうやめとけ」 なんて言っている。 ポケットからしわくちゃになった千円札をカウンターへ数枚置いて、オレは外へ出た。 「いつでもおいでよ」 ドアを開けたオレの背中へ温かい言葉がかかる。 オレは言葉で返すかわりにヒョイと右手を挙げて外へ出た。 4月といっても、夜はまだ寒い。朝、寝ぼけながら見たテレビでは来週には桜も散ってしまうらしい。と言ってもどうせ桜なんか見もしないし、気にもならないのだが。 店を出てすぐにタクシーを捕まえる気にもならず、かと言って違う店に行く気にもなれずフラフラと歩いてみることにした。 少し寒いくらいの風が火照った体に心地いい。 チョット歩いただけでニヤケ顔のポン引きや酔っ払いと見て獲物を狙う猛獣のように寄ってくるキャッチがウザい。 適当にあしらいながら歩き続けると、見慣れない店が目立たないように営業している。 「あんな場所に店なんかあったか?」 誰に言うとはなしに呟いてみる。もちろんこんな雑踏で呟いたって、誰も相手になんかしない。 その店がオレの、あの夏の始まりだった・・・。 次へ |
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