《MUMEI》
パン
「おーい、生きてる??」


おれは、動けずにいた。


きっと、おれに何かするつもりだ。


石でも投げてくるか??


でも、この体じゃ、逃げられない―…




「お腹空いてんの!?
そーかそーか!
…じゃあ、これをあげよう!!」




そいつは、持っていた手提げ袋から、
ごそごそと何かを取り出した。



「このパンはねー、給食だったんだけど、残しちゃったんだ!!
…バレたら、おかーさんに、怒られるから…」




そいつは、勝手に言い訳を始める。


そっと目を開けると、そこには

色白の、髪の短い女の子どもがしゃがみこんでいた。


地面に置かれたパンを見つめる。



…大丈夫…そうだ、な…



ゆっくりと顔を近づけ、一口かじる。




…うまい…



「あ!!食べたー!!!」



いきなりあげられた大声に驚き、身構えると、



「もうキョウハンシャだからね!!
給食残したこと、ナイショだよ!!」



そいつは、にかっと笑って、
公園の出口へと駆けて行った。



キョウハンシャ…??


…共犯者、か??




変なヤツ。



―…でも、食料が手に入った。




それにあいつは、

おれを、『気味が悪い』とは


言わなかった。

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