《MUMEI》
名前
そいつは、毎日のようにおれを訪れるようになった。



「ねえねえ、あんた名前無いのー??」



ある日、そいつは言った。



おれには、名前など、必要ない。



「…そうだ!!あたしがつけてあげよっか!!」



にしし、と笑って、そいつが提案する。



なんか、ろくな名前付けそうにない―…



「…ポチ!!」



ぽち…??


ありきたり過ぎないか…??



「ほら、模様がポチポチしてるから!!
…いいでしょ、ポチ!!」



模様…

たしかに、おれの模様は茶色と黒の斑点だ。


まあ、いいか。



名前があるってのも、悪くない。



「ポチ〜♪」



そいつが、おれの頭に手を伸ばしてきた。



その瞬間。


忘れかけていたあの恐怖が蘇ってきた。





『殴られる』





―…おれはとっさに、そいつの掌を、


噛んでしまった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫