《MUMEI》
お姫さま
その娘の名前は、


『姫井りか』


ああ、なんてぴったりで、
可愛い名前なんだろう…


オレが初めてその娘を見たのは、
1学期の終業式が終わったあとだった。


自転車置き場の隅で、
その娘はうずくまって何かをしていた。


不思議に思って見ていると、
その娘はオレの視線に気づいて、
慌てたように立ち上がり、走り去ってしまった。


「…あー…」


声を掛けようにも、かけられず。


…てか、すっげー可愛くなかったか??


髪は栗色、ふわふわで、
目はぱっちりしてて、華奢で…



そんな可愛い娘が、こんな隅っこで何を…


その娘がしゃがんでいたところに行くと、



『みゃー』


子猫が、1匹。


ビスケットを食べていた。



ああ、


かわいそうな子猫に、ビスケットを…!!


なんて、優しい娘なんだ!!!


まるで、お伽話のお姫様みたいだ…



オレは、子猫の頭をなでなですると、

あのお姫様に想いを馳せながら、自転車をこぎ出した。

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