《MUMEI》
知ラレタ真実
「あれっ?」
紬は輝の横に堕ちた羽をひょいと拾い上げた。
「この羽…黒いわ!!」
「えっ!?」
輝が首を捻らせ自分の羽を見てみると、羽が真っ黒になっていることに気付いた。
「えっ!?なんで!?」
―ガサッ
「貴方が堕天使だからよ」
突然声がした。林の中から出て来た声の主は、雫だった。
「雫さん!」
2人が言うと雫は不敵な笑みを浮かべ、首の辺りに手をかけて、ベリベリっとマスクを剥がした。
マスクの下の顔は、天使認定式会長の桑名だった。

紬は焦りを隠しながら、笑顔で近づく。
「あら、桑名さん。お久しぶりですね。しかし、なにかの誤解ではありませんか?」
紬が言うと、桑名は手で持っていたペットボトルに入っていた水を輝の羽にかけた。
輝の羽は焼けるような音を立てながら腐り、灰になって地面に堕ちた。
輝の目は大きく見開き、大粒の涙が溢れ出た。
「姫様。御覧になってください。あれが吾奴のあるべき姿…」
桑名は大きく間を置いて低い声で言った。

 「人間なのですよ。」

紬は肩を震わせながら、膝から崩れた。
泣き顔の輝がすぐに近づくが、桑名がそれを征した。
「貴方はもうただの人間なのですよ。姫様に近づく権利等ない」
輝は眼前に突き出された手をただ見ることしか出来なかった。

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