《MUMEI》
輝ノ最期
しばらくして、王族につかえる人が来て紬を連れて帰った。

俺は別れを告げることも出来ずに、ただ立ち尽くしていた。

しかし、最期に見た紬の手には、しっかりと俺の黒い羽が握られていた。
胸元には…俺があげた…赤いペンダント。



そして俺は…人間界へと繋がる…長い長い道のりを…ただ1人で歩いていく。

この道を終えると…記憶が全て消えて無くなる…。


俺も忘れてしまうのか…
紬…
時雨様…
雫さん…
王様・妃様…
神楽様…
お城の方々…
あの街…
あの家…
街の人達…
あの景色…
あの約束…

別れを告げるときが来たようだ…。
俺は体を後方へ向けた。

「さようなら。みんな」

俺は真っ直ぐ前に向き直し、人間界へと足を踏み入れた。



―さようなら…
ありがとう…―

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