《MUMEI》
しろたへの
白いスーツが朝日を浴びて光る。


今日の俺の部屋には、規則正しく朝が来た。                      
木造モルタル2階建ての黄色い壁紙の部屋に朝日が差し込むのをみたのは、数週間かぶりのことだ。


黄色い部屋に掛かった白いスーツが、そこだけ白くて目についた。            

窓のカーテンの隙間をを開くと、春の爽やかな空が広がった。              
まるで窓一枚、一枚に空色の絵の具を塗って飾ったようで、素直に俺は地球人に生まれてよかったと感じた。 春の朝ほどに爽やかな時間はないと思う。


地球を感じる事は、地球に住んでいながら、まったくない。不思議なことに、それに気づいている人すら、残念ながら少ない。

おかしな世界だ。
重力がどうとか、林檎がどうとか。

そんなことは興味があるのに、今日ここに存在していることを時々忘れることがあるなんて。




りん…りん…。
突然電話が鳴った。カチャ。               「…また、仕事か?」





俺は、部屋に掛かっていた
スーツを手にして、春の空の下、飛び出した。

“彼”に会うために。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫