《MUMEI》
いかさま師
春(はる)と書いて(しゅん)僕は冬生まれなのにそう名付けられた。
              僕の名前は、両親が付けたものではなくて、
僕が以前まで住んでいた、施設のお兄さん達が、みんなで顔を見合わせて考えたもの。

名前のない
僕が施設にやって来たのが春だったから、
ただ僕は、春(しゅん)と呼ばれるようになったのだ。



名前とは恐ろしいもので、その名がついた日から僕は
“しゅん”
という言葉が聞こえたら返事をしたり、振り向いたりしなければならなくなった。

僕にとって
一生の拘束力を持つものは、ただ単純にあっさりと決まってしまった。

まあ、そういう決まりかたも、また僕らしく思えて、おもしろいのだが。




今ばかりは、少し困った。

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