《MUMEI》
いかさま師 弐
車の窓からみえる高くて新緑が眩しいまだら模様の山は、何となく霞んで見えた。



あの霞みは百人一首とかで美しいやらなんやらと言われてるが、「結局は黄砂だ」
と、田舎の母さんが適当に当たりをつけて、偉そうに昔言っていた。


ほんとかどうかなんて、俺の管轄外だから知らないけど、


それを聞いたときちょうど国語の授業で、小倉百人一首を習っていた小学生の俺は相当ショックだった事を覚えている。


山の中には、長くて曲がりくねった道路が、山の向こうの町に続いている。

俺はこういう道を行くとき空に近くなった自分が偉くなったような気になって気分が良くなった。


白いスーツに光りがあたって自分がひかり輝いている気がしたからかもしれない。

馬鹿だな俺。


登って、登ってただ上を目指してたつもりだったのに、気づいたら車は下り坂をただ下りはじめていて、標識には白い文字で目的の町が記されている。


空は少し遠くなっていた。

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