《MUMEI》
いかさま師 参
「君の名前、春っていうよね?」


さっきまで、リボンちゃんと見ていた、まるっこい黄色の車に乗っていた白いスーツの人が、僕に話しかけてきた。


身長が、ばかみたいに高くて僕はその人の顔を見上げた。

しろくて、作り物みたいな肌をしていて、その肌の付属品として深い黒色の瞳がついている。

簡単に言うと、俳優みたいな顔。
サインもらっとく?     

「そうですけど、春くんに何かご用ですか?」
隣にいたリボンちゃんが、機械的に笑った。

少し怖く感じた。
だって、僕の目の前にいる人達は、どちらともきちんとした綺麗過ぎる笑顔で、向かい合っていたからだ。

「そうですね。僕は、君を…というか。君の名を探していたんだ」


名前?
僕の?理由もよく定まっていない僕の?

「どういう意味ですか?」

固まった僕の代わりに、リボンちゃんが冷えた笑顔で問い掛ける。


「もう一度聞くよ?…君、春くんだよね?」


強く、風が吹いた。
この時から、
相変わらず空は綺麗だったけど、僕の生活は
少し変わりはじめていたんだ。

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