《MUMEI》

89周目を走っている時のオレは気付かなかったが、屈辱的なことに、これがラパイドの全力では無かった。


彼は生粋の耐久レーサーだ…。


午後のフリー走行で、岡ヤンがパンチパーマ相手に見せたように、七〜八分の力で相手をねじ伏せる走りを生業としているのだ。


オレの視界の中でラパイドの後ろ姿が小さくなってゆく…。

90周目に突入する頃、オレはようやく思い知った…。


(技量の絶対値が違う…
…駄目だ……奴には勝てない…)


今日初めてレースを走る新参者には、所詮、敵わぬ相手だった。

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