《MUMEI》

「なんで確り拭けねーんだか」





隆志は笑いながら俺の髪をバスタオルで丁寧に拭いてくれている。





躰中痛くて撫で洗っただけの身体だけど、何だかついでに気持ちもさっぱりとした。





ピザの匂いで腹が減っていた事に気づく。






「ビールとコーラどっちにする?」





「…お茶とかあるならそっちが良い、めっちゃ喉渇いた」



「了解」





隆志はバスタオルを持ったままキッチンに行く。





俺はソファに沈み込み、座った。





すっかり何時もの隆志に戻っていてなんだか拍子抜けする。





「ほら、黒烏龍茶で良いか?」




「あ、これ好き。つか今の時間のピザにぴったりかも」




「なんか何時もこれ持ち歩いてた気がしてさ、用意してたんだ」





隆志は俺の脇に座ると、缶ビールを開けぐっと飲みだした。




「隆志ってさ…」




「うん?」




「好きな相手にだけはマメだよね」



隆志は突然ビールを吹き出した。



「ば、バカ!な、何言って…」



珍しく真っ赤になりながら慌ててテーブルを吹き出す。




「隆志汚いって、ひっかかったとこは隆志が食べてよ」




何だか笑えながら俺もティッシュで拭き取る。




「俺は元々マメなんだよ、つか好きな相手ってさー、お前俺に惚れられてんの自覚しまくりつか…、自信ありまくりじゃね?」




照れ臭そうに俺を見ながら言われ、俺もはっとして…顔が熱ってきた。





つか俺、今、結構凄い事サラッと言ってしまった…。




「な、裕斗」





隆志はすっと真面目な表情に変わり俺を見ながら肩に腕を回してきた。




「俺と付き合えよ」







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