貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》案の定。
次の日、
わたしは見事に風邪をひいてしまった。
38.2℃
平熱が低めのわたしには十分堪える体温。
アキは「ごめんね」を繰り返しながら、わたしの世話を焼いてくれてる。
謝る事なんか、ないのに。
解熱剤を飲むと、少しの間は熱が下がるものの、薬の効果が薄れてくると、到底治さないとばかりにまた体温は上昇する。
「病院行きなよ」
「10割負担は痛いよ」
わたしたちの間で、こんな会話がもう4回ほど交わされている。
「お金はあたしが出すから!」
「風邪ひいたの自分の責任だもん、アキにそこまでさせたくないよ」
思い返せば、この会話はものすごく惨めなものだったと思う。
だけど、アキにこれ以上借りを増やしたくないと云うわたしの小さなプライドが、熱のせいで膨張していたのも事実。
「わかった。つまり、あんたん家から保険証を借りてくればいいんでしょ?」
「…うん、確かに、そうだけ、ど」
「あたしが行ってくるよ」
「…えぇっ!?」
「別に、あんたん家に真正面から乗り込む訳じゃなくてさ、あの、ファンキーな弟くん居るじゃん?」
「うん」
「今、連絡取ってもらって、待ち合わせして借りて来るからさ」
返却は郵送で、とアキは続けた。
何気に名案かも知れない、とわたしは思った。
ボーっとしたまま携帯を手に取り、弟に電話をかける。
弟は自室で勉強していたらしく、運良くすぐに話はついた。
「じゃあ、行ってくるよ」
わたしの携帯を持って、アキは出かけて行った。
わたしはホッとした所為か、疲れてそのまま浅い眠りに就いていた。
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