《MUMEI》

教室の棚の影で
うずくまる。


さっきまで
響いていた声はやんで、
ミシミシ
と床を歩く音が聞こえる。

「ねえっ誰かにみられたかなあ…」

疲れきった
子猫のような
か細い声で
女の子がつぶやいた。

「べつにそれでもいいじゃん」



あれ………?


「なんでさぁー。騒ぎにでもなったら…」




待って。今の声…




「ねえ、みてよお、今落ちた書類たち…
M組のプリント。
きっとM組の生徒だよ?」

「え?
M…?」
男…が一瞬おどけた。


待って、






この声は……………










夕日に当たって、
逆光で姿が見えなかったふたり。動揺して聞き取れなかった、あのときの声質。

ただ、
あの栗色の髪

この少しかすれて細くて低い声。







「Mって、、ユウちゃんの幼なじみのいるクラスなんでしょ??」










ユウ…







佑?









あんなことしてたのは佑なの??嘘……






唇に触れていた手の
力が抜けて
思わず木でできた床に思いっきり打ち付けてしまった。

コツンッ

「やっ…!!

ユウちゃん…!誰かいるよ、逃げようよお!」
消え入るように言う。


「……待ってて。大丈夫だから……」
なだめるように言う佑…



嘘よ…




佑が歩きだした



来ないで…







来ないで…





来ないで………!




「!!!!







あ………い…………
おまえ………」





佑の震える声。



そして









あたしの目には涙が溢れていた。

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