《MUMEI》 2あたし。 みきざき…三紀崎ハル。 あたしは知り合いのいない空間に目を泳がせる。 窓際の机に座るほんのりと茶色の髪をした男の子。 まっすぐな瞳。 キレイな髪の色。 ほんの少しだけ。 光に照らされて 見えなかった。 数人の男の子と笑っている。 教科書を配ると言う掛け声がきこえた。 あたしは席に着いた。 前から二番目の席。 教科書が目の前に積み上げられていく。 それを後ろに回して自分の分を鞄に詰め込む。 ちょうど教科書が配り終えられたタイミングだった。 「ねえ」 声の方に振り向くあたし。 「はじめまして」 にこっと笑ってみせたのはあたしのうしろの席の女の子。 「これから仲良くしてね」 女の子はゆっくり笑う。 「ん」 あたし軽く頷いて笑ってみせた。 「どこ中?」 と女の子。 「ここから遠いよ」 あたしはうしろに向き直る。 「で通えないので引っ越した」 「そうなの?そんなにここ来たかったの?」 「別に…なんとなく」 「へ〜勇気あるね…」 「勇気とかないからだよ…逆に…」 つぶやくあたし。 そうなの。 こっちに来る方が楽だったの。 立ち向かったとしても、頑張れなかった。 女の子には聞こえていなかったようで、 「なんか緊張するよね新しい学校とかクラス」 と教室をちらちらと見回している。 新しい学校。 新しい教室。 ここで新しい何かが始まるんだね。 あたしは、どうなるんだろう。 これからどんななにかがまってるんだろう。 新しく、なれるよね? あたしは、逃げてきたんだね? なのに、逃げたくないと思ってる。 立ち上がる勇気を下さいと でもそれは、自分の力で何とかしようっていう思いじゃないんだね‥ あたしは答のでない 自分の情けなさを もみ消して 帰るために席を立った。 前へ |次へ |
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