貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
あのね。
「ありがとうございました。お大事にどうぞ〜」

調剤薬局のお姉さんがわたしたちに微笑んでくれる。

ちょっとだけギクシャクしていた二人には、有り難いものだったと思う。


マンションを出る時も、タクシーに乗り込んだ時も、病院の待合室でも、アキの発した「信用してよ」と云う言葉が、頭の中をぐるぐる廻ってた。


これだけアキに頼りっきりの生活なんだから、信用してない訳ないのに。

正直ムッとさえした。



けど、
アキがそう思ってたくらいなんだから、わたしが気づかないところで何かが足りてないのかも知れない、と根本的に視点を変えてみる。



「さて、帰ろっか」

「待って」

タクシーを捕まえようとするアキを制す。


「どうした?また具合悪くなった?」

わたしは首を横に振る。

「云わないと分からないじゃん?」

もう一回首を横に振る。

「…あのね」

「うん?」

「…歩いて帰ろう」

「はぁ?あんた風邪ひいてて、さっきまでフラフラしてたのに何云ってんの!?」

アキの甲高い声が熱っぽい頭にキンキン響くけど、わたしは構わずに続ける。


「手、繋いで帰りたい」

「それは今じゃなくても出来るでしょ?」

「やだ。今がいい」

まるで、小さい子供とお母さんの様な会話。


「アキもわたしを信じて。大丈夫だから、アキと一緒なら歩いて帰れるから」

「……」

暫しの沈黙が訪れる。




「手、出して」

先に折れたのはアキだった。




今思うと、意地っ張りな二人は、いつも不器用で仕方なかったね。

もどかしいや。

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