《MUMEI》

それに…

おそらくラパイド2号も、岡ヤンのレース序盤の走りをピットから見ただろう。


そしてオレが鳥肌が立つような感銘を受けたように、彼も岡ヤンの走りに背筋が凍るような脅威を覚えたに違い無い。


ならば今この時も、ラパイド2号はプレッシャーを受けながら走っている筈だ。


何故ならオレの後ろには最強のポール・シッター…

…岡ヤンが控えているのだから…。


おそらく今のうちにオレとの差を1センチでも拡げておきたいという、脅迫観念を抱いて走っているのかもしれない。


段々と小さくなってゆく青白の NSR の後ろ姿は、そんな悲壮感を滲ませているようにも思えた。


(まだチャンスはある!)

オレは自分に言い聞かせた。

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