《MUMEI》
離れてく
「ね、どしたの?」


美夏があたしの顔を覗き込んだ。

「…え、べつに…なんでもないよ?」

あたしは笑う。


「顔、…ひきつってる。」

唯が白い綺麗な手で
あたしの頭をポンっとたたく。






昨日のことは、





もう考えたくないの…












あの後、あたしはフラつく身体を抑えて、
立ち上がった。


佑はあたしを見つめるだけでなにも言わない。



あたしは佑をみることはなく



いや、


あたしは佑をみれないまま


教室を出ようとした。





あたしの目に止まったのは



教室のドアのところに立ってる







佑と
ヤッてた女。



茶髪の
ストレートロング。




美人そうな髪型はしてるけど、



実際は
美人というより




可愛いげのある顔。






女は、
あたしをみるなり
一度
鼻でため息ついた。
そして、
さっきまでの
子猫のような声
じゃなくて、
「女」の声で言った。











「ピュアで純粋なのねっ
涙流すくらいショックだった?」


「………。」



「幼なじみが、何?
幼なじみだからって、あなた、幼なじみでしかないじゃない。
いつまでもいい気に…」

「サヤ、
……やめろ」





佑が止める。








あたしは何も言わないで、
何もいい返せないで


廊下に散らばったプリントを拾い集めて、
視聴覚室、
そう、
視聴覚室に行かなきゃ…


って思いながら、


その教室を後にした。







書類を
視聴覚室に置いたあと、覗いたさっきの教室に

佑たちはいなかった。


さっきよりも紅さ増した
夕日の光りが





あたしを照らしつけただけだった





あたしは静かに、
また涙を流した。








「ねえ…、

ほんと、
どしたの?」

美夏が不安げにきく。





に引き戻されたあたしは


「………なんか、多分
睡眠不足???
湯冷めしてさあー」

と声を高くしていった。

「バカだあー!どおりでねむそー。あんた、眠いと人の話しきけなくなるタイプっしょー」

美夏は笑いながら言う。

「そーかも。まあ、偉い子だから?授業は寝ないけど??」
「うそつけ!亜衣なんていつも寝てるしょ!」

「あはははははははは」



大丈夫。
大丈夫。









あたし、
笑えるよ。












でも、










どんなに
相談できたら楽なんだろう。





でも、






女に言われた
「ただの幼なじみ」













あたしと佑は
所詮


ただの仲良しの幼なじみ。











でも、
佑が
彼女作ってきた姿は
みたことがなくて












人気はあったし
よく告白されてた。







だけど、佑はいつも
「つきあわねえよ」

ってゆって、









あたしを隣に
置いてくれることに






















内心安心してたんだ。
























あたしがそう思いながら、
笑顔で美夏の話しを聞いているとき、

唯はあたしの作り笑顔にきっと気付いて






心配そうに

あたしを見つめてた。

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