《MUMEI》

なんでいるの………?












あたしは佑と一緒に行きたくないがために
あの日から、
いつもより30分も早く家をでてるのだ。


4月の中旬といえども
通学距離が
遠いがために
早く出る外の温度は
とても冷え込む。








『なんで佑、
手袋なの?
もう4月だよ…?』

『え?だめ?寒いっしょ〜……………あ、
亜衣も寒い?』

『………べつに…』



『………』


『えっなに…?』

佑は
あたしの手を握った。

『つめてーじゃん…』

指の先だけでてる手袋。

なんか
所々手に
あたる、

佑の体温が……



『佑、
………あったかいね』


あたしは思わず俯きながら微笑った。

あたし…
佑に
手を握られた



『……なんか久しぶりにみた。』

『へ?』

『亜衣笑ったの久しぶりにみたよ、俺

寂しい顔、
すんな!』


顔上げたら佑の顔、
昔より背が高くなって
少し遠い気がするけど

幼い笑顔は変わってない。




あの頃は、

あたしが
中学生のとき、
クラス替えした
すぐあとに、

馬鹿なギャルと
喧嘩になって、
いぢめにあったときだった。




ひとりで帰る
あたしの背中を
毎日毎日、
追っかけてきてくれた




登校も
ずっと一緒に行ってくれていた。

回りの女子が


『佑都ー?

幼なじみってだけで、なんで佐倉サンの登校の護衛につかなきゃいけないの?』
『汚れるー』





あたしのいるところで
あえて大声でいう
女のコたち、




『俺の勝手じゃんね』
佑は冷たくいい放ち
そっぽを向いていた。














佑……







4月。
冷え込む朝。
待ってる佑。
あたしを待ってる佑。
15日前とおんなじ佑。















でも、14日前の佑。
例え15日前の佑と一緒でも、

あたしの知ってる佑じゃない。


『サヤの蜜だよ?』



















やだ………

























あたしは、
佑に気付かれないように
ドアをしめて、


部屋に戻った。

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