《MUMEI》 「あれ?亜衣、行かないの?」 一階から お母さんの声がする。 あたしは黙って 二階の自分の部屋で、ベッドに倒れ込んでいた。 視界の右には 窓がある。 窓から、佑が見える。 ずっと俯いて、 たまに二階を見上げる。 薄いレースのカーテンがかかってるから、 あたしの姿なんて、 見えるはずもないのに チラッチラッチラッチラ 見てくる。 ほんとにばか。 あのサヤって子は 彼女なのに、 なんで 佑は、 あたしなんか待ってるんだろう。 沈黙の中で 時計の針の音だけが響く。 はやく、 はやく、………… はやく行っちゃえよ。 前へ |次へ |
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