貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》モノローグ・2。
ひたすら寝た。
たまにアキの気配を近くに感じながらも、押し寄せる眠気に打ち勝つことは出来なかった。
夢を見た。
手を繋いで帰る場面。
いつもの様にわたしの手は冷たく、アキの手は温かい。
そんな、温度すら感じる夢を。
だけど、何も聞こえない。
お互いに喋って居るし、脇を車が通るし、たまに風も吹いて居るのに、何も聞こえて来ない。
ふと、アキが立ち止まる。
短い言葉を呟きながら、繋いだ手をほどいて居る。
「いかないで」
自分の声で目が覚めた。
慌てて起き上がり、アキの所在を確かめる。
台所で紅茶を注いでいる姿を見つけた時、わたしは声を出して泣いた。
アキの居ない世界を、もう二度と想像したくなかった。
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