《MUMEI》
Mからのメール
「げっ!メールだ」
 ミユウの端末がやかましくメールの着信を知らせている。
慌ててタイキは音を消そうとキーを押すが、なぜか消えない。
どうやらオリジナルキー設定にしてあるようだ。
「やべ。ちょ、おい、消えろよ」
手当たり次第にキーを押していき、ようやく音が止まった。

タイキはミユウの様子をそっと窺う。
彼女は穏やかに寝息をたてて眠り続けていた。

 起きていないことを確認して、ホッと息を吐くと視線を端末に戻した。
「危なかった〜。勝手に見たのばれたら、何されるかわかんねえよ」
小さく呟きながら、タイキは端末をテーブルに置いた。

これ以上、心臓に悪いことはしたくない。

そう思ったのだが、テーブルに置いた拍子に指がキーに当たったらしく、メールが開いてしまった。
「あ!!……開いちゃったよ」
見てはいけないと思いつつも、自然と目が文字を追う。
何か彼女の正体がわかるかも。
そんな期待虚しく、そこに書かれてあるのはたった一文だけだった。

『今夜、約束の場所で』

差出人はアルファベットでMとなっていた。
「……なんだ、これ?」
思わず呟いてしまったタイキの背後から「なにが?」という声が返ってきた。

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