《MUMEI》 バレエまたはスター参「ほんとは、僕、春君に会うことなんてないと、思っていたんです。」 そういいながら、白いスーツの人はカレーライスのスプーンで、 サラダのトマトを頑張って掬おうとしていた。 「お箸使いますか?」 リボンちゃんが気を遣って、自分の家にいるみたいに、 キッチンの隅にある棚の中をごそごそして、箸を差し出す。 「ありがとう。お嬢さん。」 にこやかに微笑み、 箸をつかうその人の箸の繰り方は、奇妙な持ち方のためか、あまりスマートではない。 「ね。その呼び方、わたし少し抵抗あるんですけど。 ちゃんとわたしの名前を、あなたに教えようにも、自分の名前を名乗らない人には、私も名乗れないわよね?」 敬語なのか、タメ口なのかよくわからない日本語を遣うかんじが、彼女らしい。 「…僕ですか?僕の名前は、仕事中に使用するものしか、今は、勤務中のため公表できないのですが…それでよかったら。」 リボンちゃんは驚いた様子で、 「仕事で、春君のこと捜すなんて、アメリカの映画みたい」 と、また彼女らしい適当なことを言った。 そして、僕も驚いた。 「そんな企業規模で、僕になんの用なんでしょうか…」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |